審査官補、がんばりました (4)

次は、3問目。

【進歩性】
 進歩性判断のフローチャートでは、「単なる寄せ集め」が記載されていないね。
 どうして?

<解説>
 当時の質問を改変して、進歩性判断のフローチャートをベースにしました。
 こちらの124ページ(127枚目)などを参照してください。
 https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/kenkyukai/pdf/sinposei_kentoukai/01.pdf

 先行技術の「単なる寄せ集め」とは、発明特定事項の各々が公知であり、
 互いに機能的又は作用的に関連していない場合です。

 「単なる寄せ集め」は、一般に「動機付け」の一つとして捉えがちです。

 しかし、PCTガイドライン13.05に記載されているように、
 進歩性判断は、
 原則として発明全体の容易想到性を検討すべきであるものの、
 その唯一の例外が「単なる寄せ集め」で、
 「単なる寄せ集め」の場合だけ、差異それ自身の容易想到性で判断してもいいよ、
 とされています。

 ですので、「論理付け」として、
 一般的な「動機付け」と同時に「単なる組合せ」を使うのは不適切です。

 この問題で、「動機付けの一つです」と回答してしまうと、
 指導審査官からの鋭いツッコミを覚悟する必要があります。

 今考えると、1問目~3問目は関連していたと思いますね。

審査官補、がんばりました (3)

次は、2問目。

【進歩性】
 青本の29条2項の説明での「運用上の問題」って、何?

<解説>
やっぱり、こう来たか、という感じでした。

何とか答えましたが、今考えると赤面するような回答しかできませんでした。

今なら、少しは、まともな回答ができそうな気がします。

そういえば、セミナーなどで、
新規性と進歩性の規定に違反するケースについて説明すると、
「それは違うぞ!」
みたいなコメントをいただくことがあります。

確かに審査基準には形式的には反するのですが、
法律の趣旨からすれば、実務上、問題がないケースもあります。

審査基準どおりにすれば「運用上の問題」は生じないのですが、
審査基準に反したからといって、直ちに違法とまではいえません。

指導審査官の指摘は、審査官としては、
・旧法での「運用上の問題」は何なのか、
・それを審査基準がどのように回避しているのか、
についての理解が重要だよ、というものでした。

審査官補、がんばりました (2)

まずは、1問目。

【新規性・進歩性】
 審査基準によれば、新規性と進歩性は別概念だね。
 だけど、青本の特許法29条の説明によれば、実質的に一緒とも考えられる。
 これって、いいの?

<解説>
審査基準では、新規性と進歩性は、別の概念とされています。
例えば、本願発明と引用発明との間に、
相違点がなければ新規性を有していないと判断し、
相違点がある場合には進歩性の判断を行う、と記載されています。

しかし、青本(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説)の特許法29条には、次のように書いています。

「本条の規定のうち(中略)一項各号は新規性の問題で旧法四条に該当する。」

「二項は新しく設けられた規定で、いわゆる発明の進歩性に関するものである。(中略)
 旧法の下でも上記のような発明に対して特許を付与していたわけでなく、
 その意味では運用上の問題を法文上明確にしたものといえる。 」

簡単にいうと、「進歩性の規定がなくても、実質的には進歩性の判断もしてきたよ」と。

進歩性って、何でしょうね。

審査官補、がんばりました(1)

特許庁に入庁すると、4年間、指導審査官の指導を受けます。

私は、指導審査官から、ときどき、変な質問を受けていました。

その場で、即答しないといけませんでした。

時間をとっていただいたとしても、
基本書などに答えがないものですから、調べようがありませんでした。

思い出した質問を、少しずつ書いてみたいと思います。