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【新規性と進歩性】2-3.進歩性(事例1)

そして、相違点評価だ。
引用発明2は、「消しゴム」を開示する。

そこで、重要なのが、「論理付け」だ。

「論理付け」の代表は、「動機付け」。

例えば、
1.技術分野の関連性、
2.課題の共通性、
3.作用、機能の共通性、
4.引用発明の内容中の示唆。

1については、引用発明1と引用発明2は、「文房具」という技術分野で関連する。
2については、引用発明1と引用発明2を一体にすれば、利便性は向上する。
3については、「鉛筆」で書いたものを「消しゴム」で消すから、機能・作用の関連性はある。

だから、今回の事例では、動機付けルートで起案しがち。

だけど、今回の事例は、「先行技術の単なる寄せ集め」の論理付けを使うべきだ。

つまり、本願発明の「鉛筆」と「消しゴム」は、一方を使うときは他方を使わない関係にあるため、機能的にも作用的にも関連が認められない。
そのため、本願発明は、引用発明1と引用発明2という先行技術の「単なる寄せ集め」に該当する、というもの。

実際、米国では、Lipman特許(米国特許第19,783号)の事件で「消しゴム付き鉛筆」の特許権の有効性が検討され、「単なる寄せ集め」を使って無効と判断した。

【新規性と進歩性】2-2.進歩性(事例1)

「消しゴム付き鉛筆」の事例で、説明する。

まずは、主引用発明を決める。
引用発明1と引用発明2のどちらが、主引用発明として適切だろうか。

通常は、特許請求の範囲の記載で決める。
請求項1では、「消しゴム付き鉛筆」としていて、末尾は「鉛筆」だ。
そうすると、技術分野は、引用発明1の「鉛筆」が同じ。
そのため、引用発明1が、主引用発明になる。

次に、一致点と相違点を認定する。
本願発明と引用発明1を対比すると、「鉛筆」で一致し、「消しゴム」で相違する。
そのため、一致点は「鉛筆」、相違点は「消しゴム」となる。

【新規性と進歩性】1-3.新規性(事例1)

引用発明は、2つ。

引用発明1は、鉛筆。

引用発明2は、消しゴム。

新規性判断では、本願発明と引用発明とを比較する。

ここで重要なのは、比較に使う引用発明は、1つだけということだ。

そうすると、
・本願発明と引用発明1を対比すると、「消しゴム」の構成要件で相違する。相違点があるため、新規性あり。
・本願発明と引用発明2を対比すると、「鉛筆」の構成要件で相違する。相違点があるため、新規性あり。

よって、引用発明1及び2に対し、本願発明は、新規性が認められる。

【新規性と進歩性】1-2.新規性(事例1)

では、簡単な事例で検討してみよう。

「消しゴム付き鉛筆」

本願発明は、鉛筆の後ろに消しゴムがついているもの。

特許請求の範囲は、次のものだ。

[請求項1]
 鉛筆と、消しゴムを備え、
 前記消しゴムは、前記鉛筆を使って描かれた線を消すために、前記鉛筆の後ろの端に取り付けられる、消しゴム付き鉛筆。