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審査官補、がんばりました (2)

まずは、1問目。

【新規性・進歩性】
 審査基準によれば、新規性と進歩性は別概念だね。
 だけど、青本の特許法29条の説明によれば、実質的に一緒とも考えられる。
 これって、いいの?

<解説>
審査基準では、新規性と進歩性は、別の概念とされています。
例えば、本願発明と引用発明との間に、
相違点がなければ新規性を有していないと判断し、
相違点がある場合には進歩性の判断を行う、と記載されています。

しかし、青本(工業所有権法(産業財産権法)逐条解説)の特許法29条には、次のように書いています。

「本条の規定のうち(中略)一項各号は新規性の問題で旧法四条に該当する。」

「二項は新しく設けられた規定で、いわゆる発明の進歩性に関するものである。(中略)
 旧法の下でも上記のような発明に対して特許を付与していたわけでなく、
 その意味では運用上の問題を法文上明確にしたものといえる。 」

簡単にいうと、「進歩性の規定がなくても、実質的には進歩性の判断もしてきたよ」と。

進歩性って、何でしょうね。

審査官補、がんばりました(1)

特許庁に入庁すると、4年間、指導審査官の指導を受けます。

私は、指導審査官から、ときどき、変な質問を受けていました。

その場で、即答しないといけませんでした。

時間をとっていただいたとしても、
基本書などに答えがないものですから、調べようがありませんでした。

思い出した質問を、少しずつ書いてみたいと思います。

数学の答案のエチケット(5)

14歳の頃から24歳くらいまで、数学の先生をしていました。

当時は、
「数学を勉強しているんですが、点数がのびないんです」
のような質問を、よく受けていました。

1時間勉強して10点だった。
じゃあ、2時間勉強したら20点になる?

そんなわけはありません。

数学の答案では、「自己紹介」と「志望動機」を表現すべきです。
その質が変わらないならば、いくら勉強しても、ほとんどが無駄なんです。

ドラッガーが面白いことを言っています(創造する経営者)。

「業績の90%が業績上位の10%からもたらされるのに対し、
 コストの90%は業績を生まない90%から発生する。」

「資源と活動のほとんどは、
 業績にほとんど貢献しない90%の作業に使われる。」

数学の勉強をみていると、
ほとんどの人は、貴重な時間を「正解」を導くことに費やして、
採点者に伝えるべきものを表現するための努力をしていないように思えます。

私は、それを残念に思ってます。

10分でもいいから、自分が書いた答案を読み直してみて。
自分の「想い」が出ていない部分を削除して、自分の「想い」を書きなおしてみる。

点数は、変わらないかもしれない。
だけど、それだけで、自分が大切にしているものが見つかるかもね。

どっちがいい?
一つは、100問「正解」を出せたけど、101問目は解けるかどうか分からないっていう不安とのたたかい。
もう一つは、たった1問なんだけど、その答案で、自分の「将来に向けた想い」を伝えた、という感動。

私は、答案で「自己紹介」と「志望動機」を表現して、そんな感動を味わうことができたよ。

最近は、高校生に、そんなことを伝えています。

数学の答案のエチケット(4)

はっきり言って、簡単な問題でも、きちんと差は出る。

じゃあ、大学が、難しい問題を出題する理由は、何だろう。

一つは、難しい問題の方が、落ちた受験生が納得しやすいってこと。
先の問題でも、多くの受験生は、実際には2点の評価なんだけど、5点とったと勘違いしている。
難しい問題であれば、そういうのを説明する手間が省ける。

あと一つは、難しい問題であれば、受験生の「自己紹介」だけでなく「志望動機」も見えること。
簡単な問題だと、受験生の「過去」で解けちゃう。だから、受験生の「将来」が見えにくい。
難しい問題だと、受験生が「過去」を踏まえて、新たな視点を設定する。だから、受験生の「将来」を評価しやすい。

数学の答案で表現すべきは、受験生の「過去」と「将来」。
具体的には、「自己紹介」「志望動機」だ。
「正解」が書かれているか、なんてのは、どうでもいい。
だって、入試問題なんて、採点者からすれば「正解」があるのは当然だから。そんなの書いても、評価されないよ。
採点者が知りたいのは、どちらかといえば、問題を見出す能力だ。

「自己紹介」と「志望動機」を表現してない数学の答案は、ゴミでしかない。

簡単な問題だと、「自己紹介」の比重が大きくって、「志望動機」が見えにくい。
難しい問題だと、「志望動機」の比重が大きくなる。将来何がしたいんだ、ってこと。

大学が難しい問題を出題するのは、その人の「将来」を知りたいっていうメッセージだ。

じゃあ、受験生として、そのメッセージに、どのように応えるんだ?

数学の答案のエチケット(3)

こういうとき、うまく使うといいのが「別解」。

まず、「解の公式」を利用して解くことで、論理性をアピールする。
ここで、「解の公式」の導出を記載して、暗記しただけっていう批判をかわす。

で、別解として因数分解を使って解くことで、他の人たちに負けないようにする。

あとね。コンピュータ系の学部やら、数学科やらを目指すのであれば、アルゴリズム的な別解を書いた方がいい。
グラフをちょちょっと書くだけでオッケー。
別解は、加点を狙うだけだからね。時間の無駄は排除する。

というのは、因数分解や解の公式を利用するのは、「集合数」をベースにしたアプローチ。
ただ、実際のシステムでは、「順序数」をベースにしたアプローチが、近似解だけど使用されている。
だから、別解として「順序数」をベースにしたアプローチを示しておくと、自身の数学全体での体系的な理解を示すことができるんだ。

そうすると、こんな感じになる。
このくらいだったら、上位5%くらいに入る感じ、かな。

説明したら、「こんなの、自分でもできる」っていう感じだろう。
だけど、それを書くのって、本当に難しいんだ。